Do you see the GIRL

元・アニメ制作進行の自分が、アニメを見ての感想だったり、映画を見ての考察だったり、エロゲをやって勃ったことだったりを書いていくブログです。

【げんしけん(木尾士目)】斑目晴信、オタクっぽいオタク

(注:今回のエントリでは「オタク」という単語は、「世間一般の言ういわゆるオタク」的な意味合いで使っています。)

第5回は漫画「げんしけん」について。

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2002年から2006年までアフタヌーンで連載されました。
大学の所謂「オタクサークル」を舞台にした作品で、「オタクもの」を代表する漫画といえるのではないでしょうか。
なお、現在も「二代目」が連載中ですが、残念ながらこちらは読んでいないので今回は触れませんのであしからず。
今回は主要登場人物の一人である斑目(マダラメ)について語りたいと思います。

斑目は、「こんなにオタクらしいオタクキャラは後にも先にも出てこないのではないか」と思えるほどに立派なオタクです。
これは「極端に気持ち悪いオタク」とか「ステレオタイプ的なオタク」という意味ではなく、言葉の通り「オタクっぽい」のです。
この「オタクっぽさ」は斑目のそれに焦点を当てたエピソードでも、それ以外の日常の細かい言動の中でも表れています。



■「自爆スキー」

第20話、部室が使用禁止になったために、ミーティングを各部員の自宅の持ちまわりで行うことになるエピソードです。
女性部員もいるので、他の部員たちはエロいものは見つからないようにする中、斑目は自分の部屋でのミーティングの際にあえて全く部屋を片付けません。
それを笹原は「自爆スキー」と評したのですが、これは斑目のオタクっぽさが顕著に表れていると思います。

オタクは自爆することで自分のオタクっぽさを際立たせて、自らのアイデンティティを保っているのではないでしょうか。


僕自身が自爆スキーだからそう思うだけなのかもしれませんが…。

また、このエピソードは、「結局斑目もエロDVD(実写)を隠していたのが見つかったけど、それは囮で本命の"咲のコスプレ写真"は隠し通した」というのがオチなのですが、この行為も非常にオタクっぽいですね。
ちょっと風変わりな作戦を立て、まるで自分が軍師にでもなったかのようにその駆け引きを楽しむ。
この作戦が成功したことを斑目は誰かに言いたくて仕方ないんだろうなぁと勝手に想像してしまいます。



斑目のオタクっぽい言動いろいろ

第2話でコーサカ宅に集まって格ゲーをやる際に、斑目は「大会しようぜ!レギュレーションどうする?」と発言します。
この「遊ぶ際にやたらにルールを作って仕切りたがる」というのがオタクっぽい。
リーダーシップとは全然違います。ルールを作ること自体が楽しいんですね。

第9話での冬コミ行きの電車の中で、つま先用カイロを靴に入れながら「暖かいっていう実感はないけどあるとないとじゃ大違いなんだぜ」と言い、笹原が「言ってましたね」と返すシーン。
「気に入った表現を何度も言いたくなる」というのもまたオタク特有な感じがします。
このエピソードでは、「冬だからな!」というセリフが久我山に「キャラ作りの一環」と評されていますが、僕はこちらのつま先用カイロのくだりの方がオタクっぽさを感じました。

第23話での斑目と咲の会話。
斑目「やだねぇ 色恋沙汰しか考えてない奴は!脳みそピンクなんじゃねーの」
咲「うわ~~~ オタクにだけは言われたくねぇ」
これはオタクと非オタクの感覚の違いをよく表していると思います。
これもまた自分の体験に基づく話になるのですが、僕も学生時代に非オタクの女性とよく同じようなやりとりをしていました。
オタクからすれば何でも恋愛に結びつけて考えてしまう女性が「脳みそピンク」で、逆に非オタクの女性からすればいつもアニメの女の子のことばかり考えているオタクが「脳みそピンク」。


お互いに自覚がないのがまたタチが悪いですね。



■咲との関係

今までは斑目のオタクっぽさをあげつらってきましたが、彼を語る上で欠かせないのが咲との関係。

まずは第14話鼻毛回。
恐らくここから咲への好意が明確になった(なり始めた?)、斑目のターニングポイントとなる回なのですが、やはりこの回でも斑目のオタクっぽさは遺憾なく発揮されています。
部室で斑目と咲が二人きりになり、沈黙に耐えられずカバンの中を漁るフリをし、挙げ句の果てに何かを思い出したフリをして部室を出て行ってしまうなんてオタク以外の何者でもありませんね。
また、部室に二人きりで会話が無いというシチュエーションとはいえ、とにかく斑目のモノローグが多いこと多いこと。
咲の鼻毛が出ているのを『さりげなく』『自然に』『笑い話で済むように』と思考が巡りまくっているのもそうですし、その後に「考える前に動け!!」って"考えて"しまっているあたりがもうどうしようもなくオタクですね。
結局その後咲にぶん殴られて、斑目はカバンを置いたまま部室から出て行ってしまうのですが、この回の最後のコマでそのカバンが意味深に映っているのが、この漫画で今までになかった異色な雰囲気を醸し出しています。

そして第32話寿司屋回。
斑目の台詞の中でもとりわけオタクっぽさが滲み出ている名台詞「……俺らって ケンカしてなかったっけ」が炸裂します。
寿司屋内での会話に関しては結構はっきりと斑目の内面が描かれているので特に言及しませんが、気になるのは帰路の電車の中。
鼻毛回と同様にラスト数コマは無言で終わります。
そして鼻毛回では部室に置きっ放しだったカバンを、今回は斑目がしっかりと抱きかかえているのも印象的です。

…深読みしすぎですかそうですか。

ちなみにげんしけん無印主義者の僕としては斑目と咲の話はここで終わり、二代目の告白なんて信じない、というスタンスです。
どうでもいいですね。



■ラストエピソードに集約された全て

最終巻の巻末特別書き下ろしで追い出しコンパのエピソードが収録されているのですが、ここにげんしけんの魅力の全てが詰まっていると言っても過言ではありません。
斑目が「第1回どうやったら春日部さんが萌えキャラになるか会議」を始めて、各部員が好き勝手言っていくのですが、斑目が「あ…思いついちゃった」と言って恥ずかしそうに一言、

「実は処女」

最高にオタクっぽい。

でもわかる。

そして何がまたオタクっぽいかと言うと、「あ」って言う前のコマで明らかに思いついてるんですよね。斑目の表情見ると。
それを言うべきか否かをしばらく考えてるのがオタクっぽい。

でもわかる。

そして咲がコーサカに自分のどこに萌えるか聞いて、
「咲ちゃんに萌えは… 無いなあ~~……
と言われて周りが凍り付くのもこの二人の関係をバッチリ表していると思います。


斑目のオタクっぽさ、班目と咲のラブコメ要素、咲とコーサカの関係性。
この短いページ数で完璧に表現している名エピソードだったと思います。



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さて、斑目の魅力はわかっていただけましたでしょうか。
「オタクっぽい」ってけなしているように聞こえるかもしれませんが、凄く褒めてるんですよ?

僕は「オタクっぽくない」と言われる方が嬉しいですが。

 

アニメ版のOPはノスタルジックな名曲なのでこちらも是非。

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