何故『天使の3P!』は見ていて腹が立つのか?
ここ最近、新作アニメをあまり見ていない日々が続いた。
毎クールこれだけ多くのアニメが放送されているこの幸せなご時世にこんなことでは勿体ないと思い、とりあえず何か1本でもと見始めたのが『天使の3P!』(以下『3P』)である。
何故このアニメを選んだかと言えば、当方軽度のロリコンのため、ヒロインがロリならとりあえず見ようじゃないかという形で、まあ必然といえば必然だろうか。
しかし、原作をろくに調べずに視聴を始めたのがよろしくなかった。
公式サイトにもデカデカと書いてあるが、この作品、原作が『ロウきゅーぶ!』と同じ作者なのである。
それの何がよろしくないかというのは、以前アニメ版『ロウきゅーぶ!』に関して書いたエントリを読んでいただければ、おおよそ理解していただけると思う。
ともかく『ロウきゅーぶ!』が見るに堪えなかったので、同じ作者と気付いた時点で『3P』も見るのをやめればいいのではないかというのは至極もっともな話だ。
しかし、せっかくなので今回はしっかり見てボロクソに批判してやろうと思い、視聴を継続することにした。現在、第1話を見終えての率直な意見を述べていきたい。
主人公が引きこもり
この程度のことに目くじらを立てていては話が進まないかもしれないが、今回は妥協せず徹底的に批判していこう。
端的に言って「安直」である。
原作はライトノベル(電撃文庫)ということで、中高生を主なターゲットとしているのだろう。
アニメが"オタクだけのもの"でなくなって久しいが、それでも心のどこかで「俺アニメ見てるとかチョーオタクじゃんwwリア充氏ねwww」という感情を持っているであろう(あるいは実際にネクラなオタクな)視聴者層には実に共感を得やすい主人公と言えるだろう。
だからといって、恥も外聞もなく安直に引きこもりを主人公に据えるのは如何なものだろうか。「需要があるから」と言ってしまえばそれまでだが、「需要があるものを提供すること」がはたして創作活動と呼べるのだろうか…。
これらを全て分かった上でやっているのであれば「プライドないのかよ」と言いたくなるし、これが本当に最高のものだと信じてやっているのであれば、それは程度が知れているとしか言い様がない。まあ、前者ではあると思うが…(むしろ前者であってほしい)。
桜花のキャラクター
桜花の初登場シーンは「響が欠席していることをネタにしてウケを取っている男子を冷めた目でいさめる」というシチュエーションだった。
桜花がクラスでどういう立ち位置で、響にどういう感情を抱いているか(少なくとも悪くは思っていないようだ)が端的にわかるシーンではあるが、そんなものを吹き飛ばしてしまうほどに薄ら寒いシーンと言わざるを得ない。
何が薄ら寒いかと言えば、作者の意図があまりにもバレバレなところである。
それは、
「こういうとき、委員長的なキャラが『ちょっと男子ぃ~!』って言うのはよくあるけど、この子はそうじゃありませんよ。正義感はあるけどそれを露骨に出さず『そーゆーの面白いと思ってんだ』って冷めた感じで男子を黙らせる凄い子なんですよ!(しかも響のことが好き!)」
といったところだろうか(作者様、違ったら大変申し訳ない)。
別にそのようなキャラ自体が良くないと言っているわけではなく、これを凡百の視聴者である私などにも簡単に見抜かれて「薄ら寒さ」を感じさせてしまっているというのが非常に情けないのである。
その後の女子トイレでの「そこ空けてもらっていいかな?」のシーンも同様である。
「女子2人は響の噂話をしてるけど桜花はそこにつっかかるほどガキじゃなくて、ただ手洗い場を空けてほしいと言って2人を黙らせるのクールな女の子なんですよ!(しかも響のことが好き!)」
といったところか。
希美のキャラクター
わかりやすいツンデレである。「ツンデレ」の語義も多岐にわたっているが、2017年現在、一般的に最も普及しているであろう「強気だけど純真」的な意味合いの「ツンデレ」である。
「ツンデレキャラ」と「テンプレツンデレキャラ」は別物になって久しいが、希美は後者だ。そして、もはや前者より後者の方が多いだろうというぐらいに、後者は萌え業界に蔓延っている。
こんなに巷間にありふれたキャラクターを今更登場させて果たして何の意味があるのだろうか。もちろん、こういうキャラを出せば、一定数の人間に受け入れられるというのは分かるし、「ハイハイテンプレwww」と言いながら喜ぶ人間もこれまた一定数いるだろう。
だからといって普通そんなキャラをそのまま出すか…?あとは「主人公が引きこもり」の項で書いたこととほぼ同様の批判になるので割愛する。
このシーン
……。
キャラと背景をこの位置で重ねることで何がやりたいかは分かる。
分かる…が。
何故やった。
そして横からスッと入ってくる2人。
学芸会でも見ているかのような気分だ。
小学生だから学芸会でも間違ってないのではないかとも思いかけたが、コンテマンは小学生ではない。作り手は大人なのだから、大人らしい画面構成をしていただきたい。
ライブシーン
私はじめてだから…ジュポ!ジュルルル的なのに似てる
— むーん (@bluemoon445) 2017年7月17日
Twitterで拝見したこの一言に尽きるのではなかろうか。
ここに関しては単純にクリエイターだけの問題ではなく、曲が絡むことでいわゆる「大人の事情」が出てくるのもやむなしなので、頭ごなしに批判はできない。
しかし思い出してほしい。
かの大ヒットアニメ「けいおん!」での最初の演奏シーンである『翼をください』を。
「初心者っぽさ」をしっかりと出しつつ、それでもなお、いやそれがあるからこその「アンニュイさ」「青春感」があのシーンには溢れていた。
曲のジャンルも違うのでそのまま見習え模倣しろとは言わないが、「アニメ」という制約の中でもあれだけのことができるということは知っておいていただきたい。
アニメーションに関しても少々口を出したい。
モーションキャプチャに関しては特に言うことはないし、当然であるが動きがきっちり再現されている。
最も気になるのがそらのドラム演奏の動きである。そらの無表情も相まって、あの動きはもはやギャグにしか見えない。体が微妙に揺れているのがとてつもなくシュールだ。
恐らくライブシーンはこの1回ではないのだろうから、ライブに割く労力も配分を考えないといけないのであろうが、せっかくの初お披露目なのでもっと良い物が見たかったというのが正直なところだ。
…と、よくもまあここまで批判的なことが書けたものだと自分でも若干驚いている。
とりあえず視聴は続けていく予定なので、最終話で私に見事な手のひら返しをさせてくれる作品になることを願うばかりだ。
無理だろうなぁ……。