【ピヨ子と魔界町の姫さま(渡会けいじ)】異常な思考を受け入れ楽しめ!
渡会けいじ先生の最新作『ピヨ子と魔界町の姫さま』第1巻が、2018年3月24日に発売された。
渡会先生は、以前に当ブログでも紹介させていただいた『O/A』の著者である。
その、あまりにも常軌を逸した内容に衝撃を受け、239日ぶりにブログを更新するに至った。
タイトルからしていわゆる「異世界もの」かとのような印象を受けるが、「異世界感」はかなり薄いと言っていいだろう。
ジャンルとしては「学園日常もの」である本作。一番の見所は、二人のメインキャラピヨ子と姫さまの「常人ではとても思い至らないような異常な思考・言動」だ。
と言っても、快楽殺人者が出てくるようなサイコホラーなどではなく、全編ギャグに振り切っている。
「不条理ギャグ」と呼ばれるものに近いのかもしれないが、基本的に主人公たちが周囲に不条理を撒き散らし続けるというなかなかにヘンテコな作品だ。
第2話のラスト、ホームルームにおいて驚くほど自然な流れで龍造寺さんに密漁の罪をなすりつける展開などは、実に非道いギャグなのだが何故か感心すらしてしまった。
ここから何か展開するのかと思いきやこれがオチになるという投げっぱなし感もまた良い味を出している。
最も「異常さ」を強く感じることができるのは、第4話での生徒会棟の清掃を行う回だろう。
生徒会の備品を徹底的に破棄・破壊し尽くそうとし、それでも余計に散らかってしまうので、最終的に灯油をぶちまけて全て燃やしてしまうという暴挙は、今こうして文章に起こしているだけでも戦々恐々としてくる。
燃やしているときの「ラッセーラー ラッセーラー」という謎の効果音、段々と暗くなっていく画面、瞳のハイライトが消えたピヨ子の表情など、異常を異常で煮しめたような雰囲気が最高に笑えて仕方ないのである。
渡会先生の作品はキャラクターがとにかく可愛いのも魅力の一つである。
一番好きなキャラクターは、上述の第4話で登場した生徒会代表の吊川さんだ。
感情がピーキーな彼女だが、どうやら姫さまの異常な言動によってそれにますます拍車が掛かっているようだ。
ぜんぶお前がやったことだよ!!バァカ!!
のコマは何度読んでも笑いを堪えきれない。
とにかく苦労を強いられる美少女というのはいつの時代もいいものである。
そして第7話のお祭り回では私服で再登場となり大変な眼福であった。
何はともあれ可愛いのである。
たった1ページの登場ながら、姫さまにツッコミを入れ、3人の妹たちには祭りでアレやコレやとねだられ、挙げ句その妹たちによって恥ずかしい秘密を姫さまにバラされるという苦労人っぷりだ。
それが愛しくて仕方がない。
今後ともどんどん酷い目に遭っていただきたいものである。
全て事細かに書くとキリが無いので割愛するが、靴舐めのくだり、ブルボン大気圏突入のくだり、回転寿司で会計押しつけのくだり、ピッチング練習のくだり、「めだか 和尚 消しかた」のくだりなど、異常としか言い様のないギャグが連発される本作。
是非とも読んでいただいて、共に脳みそを侵食されてみてほしい。