Do you see the GIRL

元・アニメ制作進行の自分が、アニメを見ての感想だったり、映画を見ての考察だったり、エロゲをやって勃ったことだったりを書いていくブログです。

【シン・ゴジラ】ゴジラへの恐怖と応援する気持ちの同居

3.11と「シン・ゴジラ

7月31日の暑い日の朝、僕は初代「ゴジラ」を見ていました。

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白黒の画面の中、焼け野原になっていく東京の街を見ながら、終戦から9年しか経っていない1954年に「ゴジラ」を見た当時の人たちの心中がどんなものだったのだろうかという空想が頭の中をグルグルと巡っていました。
しかし、空想は空想にすぎず、頼りのWikipediaの「当時の人々は~」といった記述は単なるネット上の記述にすぎず、実際のところは当時見た人に尋ねる以外になく、ご老人に知人の少ない僕にはそれを知る手立てはありません。

その日の夕方に見たのが「シン・ゴジラ」でした。

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誰が見てもわかる通り、3.11を強く意識して作られた作品です。
今回「シン・ゴジラ」を見て覚えた感覚が初代「ゴジラ」を見た人のそれと全く同じとは言えませんが、50年後に「シン・ゴジラ」を見た人には味わえない感覚だと思うと、大変貴重な経験をできているとは思います。

3.11関連で更に言えば、件の原発事故があり、とにかく「原子力」というものに対して敏感になった日本において、もう二度と(少なくとも僕が生きている間ぐらいの期間は)ゴジラ映画は作られないだろうと思っていました。
仮にできたとしても、「原子力」の設定はかなり控え目になると思ったのですが、ここまで真っ向から描写されていたのは意外です。そしてその点について「不謹慎だ!」と騒ぐ人がほぼ見受けられないのは更に意外でした(もちろんゼロではないんでしょうが)。
(少なくともフィクションにおいては)「原子力」を題材とすることについて問題が無いということを知らしめたのは、日本のエンタメ業界に大きな影響を与えたのではないでしょうか。

 

造形

まず、予告編などでパッと見た感じでは、平成シリーズで育ってきた僕にとって、ゴジラが帰ってきたと素直に思わせてくれる印象でした。
ギャレス版がアレだったからでしょうか…。
赤くただれた皮膚やら目の印象やら尻尾の異常な長さやら、明確に差別化してきた部分は多々ありましたが、あくまで"ゴジラ"の範疇で「格好良く」「恐ろしい」デザインに仕上がっています。
長い歴史の中でデザインも立ち位置も大きく変わっていったゴジラですが、原点を辿ればあくまで「恐怖」の象徴です。
予告編やポスターといった情報の少なかった時点でもその恐怖はビシビシ伝わってきたのは、怪獣の造形として非常に優れていた証拠と言えるでしょう。

 

恐怖

恐怖という意味でゴジラの原点に戻ったという印象も受けますが、実際に感じる恐怖や絶望感は圧倒的に初代よりも「シン・ゴジラ」の方が上です(映像技術の進歩があるので当たり前かもしれませんが)。
何をどうやったって人間はゴジラには勝てない、もう地球はお終いだ…という絶望感は、過去のゴジラシリーズだけでなく、今まで観たあらゆる作品の中でもトップクラスでした。

例えば「ウルトラマン」ならウルトラマンが助けに来ますし、「アイシールド21」ならヒル魔の奇策が残っていますし、安い少年漫画ならご都合主義で上手くいきますし、良い少年漫画なら主人公がそれまで培ってきた努力が理にかなった展開を経て開花します。
しかし、「シン・ゴジラ」ではゴジラという存在以外は徹底的にリアル路線です。
スーパーXのような超兵器もなければモスラのような人間を守ってくれる怪獣もいない。

取り得る手段は、自衛隊か、ヤシオリ作戦か――核。

なのでこの3つのうちの「自衛隊」がタバ作戦失敗で破れたときにはこの世の終わりを感じましたね。

 

負けるなゴジラ

ところで「シン・ゴジラ」を観ていて「ゴジラ負けるな!」と思ってしまった人はどれぐらいいるのでしょうか。
僕はタバ作戦の中で一瞬その感情が芽生えました。

最初は口径の小さめの銃火器から攻撃を始めて、徐々に火力を上げていく作戦内容だったのですが、火力が上がっていく中で、ゴジラに着弾したときの爆煙も徐々に大きくなっていきます。
そして、ゴジラの大部分が爆煙に包まれ、パッと見ゴジラにかなりのダメージを与えているように見えます。
ゴジラ登場からずっと「どうやって倒すんだろう…」と考え、終盤は「ヤバい!もう人類滅びる!!人間頑張れ!!」と思っていたのですが、このときだけは「え…こんなに爆撃食らってゴジラ大丈夫なん…?ゴジラが負ける…?いやだ!ゴジラ頑張れ!!」とゴジラを応援していました。
制作側が狙ってこう感じるように演出したかは知る由もありませんが、不思議なことにあの一瞬だけはゴジラ側に感情移入していました。

僕は平成シリーズを見て育ってきた人間なので、ゴジラは「人間の味方ではないけど悪い怪獣じゃない」という印象がすり込まれているのでしょうか。
これは元々ゴジラに対して持っている印象によって全然変わってきそうですね。

 

終わりに

ラストシーンの人間っぽいアレは何なのかとかストーリーに関する考察は気が向けばまた。
でもそんなの他の人がとっくにやってるだろうからなぁ…。